審美歯科

セラミック歯とは

セラミック歯は白い歯という印象がありますが、詳しいことをご存知でしょうか。今日は、セラミック歯のメリットやデメリット、銀歯よりもセラミックをすすめられるのはなぜなのか、セラミックに向く人や向かない人及び注意点も含めてご説明します。

セラミック歯とは

セラミック歯とは、セラミックを材料に使った人工歯を指し、主に虫歯治療や審美治療で被せ物や詰め物に使われる素材の一つです。ジルコニアセラミック、オールセラミック (e-max)、メタルボンド、セレッククラウン(デジタルクラウン)、ラミネートべニアなどセラミックにもいくつか種類があります。保険適用で使用する材料の金銀パラジウム合金や歯科用樹脂(プラスチック)と異なり、セラミックは天然の歯のような透明感と色味を再現できるのが特徴で、審美性を重視する方に人気です。セラミック歯が使用される場面として、このようなケースが考えられます。

  • 虫歯の治療で被せ物が必要である
  • 前歯の見た目を美しく整えたい
  • 金属アレルギーのリスクを避けたい

セラミック歯は見た目や耐久性、歯や体の健康面のバランスを取りたい人に選ばれやすい治療方法と言えるでしょう。

保険適用の銀歯と違うセラミック歯の特徴

銀歯との最大の違いは、見た目と使われている材料の生体親和性の高さです。セラミック歯は、天然歯に近い白さがあり美しい仕上がりです。ドイツやスウェーデンでは、パラジウムが体に悪影響をもたらすため、幼児や妊婦に向けた歯科治療で治療を禁止しています。このように、セラミック歯は見た目のみではなく機能性まで配慮した治療であると言えます。

なぜ金銀パラジウム合金は海外で禁止なのか

歯科で保険適用されるようになったのは、第二次世界大戦後からで安い合金であったからです。金銀パラジウム合金は、金12%、パラジウム20%、銀50%、銅16%、亜鉛・インジウム・イリジウムなど2%の組成ですパラジウムは金が摩耗しないように、銀が腐食しないようにという役割がありますが、金属アレルギーテストを行うと約半数の方に陽性反応が出てしまうことから、体にとってはあまりよくありません。唾液と経年劣化により合金が溶出すると金属アレルギーや歯茎の黒ずみが起きたり、被せ物が歯の形に合わず細菌が侵入し、その下で二次むし歯などのリスクが高いです。

セラミック歯のメリット・デメリット

セラミック歯には多くのメリットやデメリットがあります。特に下記のような点が評価されています。

メリット

  • 光の透過性が高く、本物の歯と見劣りしない見た目の美しさ
  • 吸水性のあるプラスチックと比べ、経年による黄ばみが少なく変色しにくさ
  • メタルフリーで身体に優しく金属アレルギーの心配がない
  • 黒ずみなどが起きにくいから歯茎への影響が少ない
  • 材料の精度が高く適合性が良いため歯と補綴(ほてつ)物との隙間ができにくい

デメリット

  • 保険適用ではないことが多く、自費治療となり数万円〜十数万円かかる費用の高さ
  • 強い衝撃や歯ぎしりでひびや割れなどの破損する可能性がある
  • セラミックの厚みを保つために歯をしっかりと削る必要がある
  • 精密な型取りや技工のため銀歯より治療に時間がかかることもある

金属でできている歯は割れませんが、セラミックは曲げ伸ばすような耐久性が少し劣るため、咬合力が強くかかる部分のセラミック歯はどうしても割れたりすることがあります。美しさと機能を両立させるには、日常のケアや歯科医院選びが重要です。

歯を削ることにより起こることも考える

虫歯治療で被せ物をセラミックの補綴物にするのではなく、歯並びや歯の大きさの改善のためにセラミックをする際、一つ考えなければならないことがあります。歯列矯正ではなくセラミック矯正を選択される場合、どうしても健康な歯を削らなければなりません。オールセラミック、ジルコニアセラミックなどは天然歯を1mm~1.5mm程度(咬合面などによってはそれ以上)全方位、ラミネートべニアなどは0.3mm~0.5mm接着面のみ削る必要があります。歯を削るとダメ―ジを受けやすくなるため、将来の歯のリスクもセラミック矯正の際には検討しましょう。

セラミック歯が向いている人・向かない人

セラミック歯が向いている人、反対に向かない人はどんなタイプでしょうか。

向いている人

  • 前歯や周囲の人に見える部分の歯を自然な白さにしたい
  • 金属アレルギーがある
  • 長期的な審美性と耐久性を求めている
  • 自費治療に抵抗がない

向かない人

  • 日常的に強い歯ぎしりや食いしばりの癖がある
  • 歯科で定期的にメンテナンスを受ける習慣がない
  • 自費治療に抵抗がある

素材の種類と選び方のポイント

セラミック歯と一口に言っても、セラミックの種類や特徴はさまざまです。

セラミックの違い

セラミック歯には、このような種類があります。

オールセラミック (e-max)

二ケイ酸リチウムというガラスセラミックスを使用し、ポーセレン(陶材)より4倍以上の強度や、光の透過性があります。ジルコニアより強度は弱いが高い透明度があるため、前歯にオススメのセラミック歯です。

ジルコニアセラミック

2005年以降日本に導入された酸化ジルコニウムを主原料としたセラミックで、強度と耐久性が高いです。光の透過性はe-maxに劣っていますが、強度が高い特徴から奥歯にオススメのセラミック歯です。

メタルボンド

1950年代に登場した人工歯で、ポーセレンと接着する金属フレームを鋳造で製作したポーセレン冠です。舌側から金属の部分が見えるため、前歯以外の部分におすすめですが、中身が金属で外側がセラミックのため金属アレルギーの方には不向きです。

セレッククラウン

ドイツで開発されたCAD/CAMシステムを使用し、歯型をデータ化して歯科技工士が設計し、セラミックのキューブから歯の形へと削っていきます。歯の色を天然歯と完全に合わせることは難しく緻密さではオールセラミックやジルコニアセラミックに劣りますが、奥歯に使用する方もおられます。

ラミネートべニア

1920年代にハリウッドの俳優が歯の色を変えるために撮影で使用したのが始まりで、歯科治療としては1990年頃から広まりました。上顎の前歯に薄いセラミックのシェルを貼り付けて見た目を改善するネイルチップのような治療ですが、上顎の歯と下顎の歯の先端が当たる不正咬合である切端咬合の方や、歯ぎしり、食いしばりの方には使用できません。

ハイブリッドセラミック(当院では扱っておりません)

セラミックの粒子を60%~90%、歯科用プラスチック(レジン)を40%~10%混ぜた材料で作製したセラミックです。保険適用のレジンよりも見た目として優れていますが、セラミック100%の材料から作った人工歯と比べるとどうしても見劣りします。

自分の歯の位置や噛み合わせの強さ、審美性の要望に応じて歯科医師と相談しながら人工歯の材料を選ぶことが重要です。

まとめ


セラミック歯は単なる白い歯ではなく、審美面と機能面のバランスを取った見た目や歯の健康、長期的な満足感を総合的に考えた治療法です。保険適用外であるため費用面のハードルは高いですが、銀歯からの切り替えや見た目を気にされる方にとっては、選ぶ価値のある治療法です。大切なのは、自分自身に合っているかをきちんと見極め、信頼できる歯科医院でしっかりとカウンセリングを受けたうえで、納得のいく治療を受けましょう。