
虫歯の治療後に起きる痛みなどの症状や、どのタイミングで再度クリニックを受診すれば良いのかなどご説明します。
虫歯治療後に痛みが出る場合の理由と対処
歯医者で虫歯の治療を受けた後に、歯が痛くなった経験はありませんか? 治療をしたのにどうして歯が痛むのでしょうか。その主な原因と対処法についてご説明します。
1. 治療によって神経が敏感になっている
- 虫歯治療時の機器や熱の影響で神経が敏感になり痛みが起こることがある
- 虫歯が神経に近いと痛みが強くなることがある
- 痛みは通常は時間とともに和らぐが、刺激を避けることが重要
2. 神経が炎症を起こしている
- 虫歯が進行して神経まで影響している場合に、痛みが持続することがある
- 神経を取る処置が必要となることがある
3. 詰め物による圧迫
- 詰め物が神経を圧迫すると痛みが生じることがある
- 嚙み合わせの調整が必要な場合がある
4. 銀歯の詰め物による痛み
- 銀歯は熱を伝えやすく、食事での温度変化が痛みとして感じられることがある
- 痛みが続く場合は歯科の受診が必要
5. 根管治療での神経取り残し
- 根管治療が適切に行われていないと痛みが持続することがある
- 痛みが続く場合は神経の再治療が必要になることがある
治療後の痛みが続く場合は、早めに歯医者で対処してもらいましょう。
治療後の痛みはいつまで続くの?

むし歯治療直後の痛みが激しい場合は、歯医者さんに処方された痛み止めか、市販の鎮痛薬を服用するのがご自身でできる対処法です。約4~5日、長ければ1週間ほどで痛みは徐々に治まってくると思います。
今まで何もしていなかった歯に被せ物や詰め物をすることで、窮屈に感じ、体が痛みととらえることがあります。その場合は噛んでいくうちに徐々に慣れていきますが、被せ物の高さが合わない際も噛む度に痛みが生じます。噛む時に違和感があるならば、クリニックで診療を受けましょう。
一ヶ月経過したのにズキズキする痛みが治まらないケースでは、歯科医院へなるべく早く通院してください。注意すべき点は、むし歯治療を行った歯科へ再度受診することです。どのような治療を行ったか、きちんとカルテに残っていますし、痛みの原因についてより早く対処できます。
激しいスポーツや飲酒、入浴などは、歯の痛みがある時には避けることをおすすめします。いずれも体の血行を良くしてしまい、痛みが増幅します。入浴はぬるま湯で済ませるか、痛みが止まるまでの間はシャワーにしましょう。
虫歯治療後の痛みの対処法
歯の治療後に痛みが続く理由はさまざまですが、痛みが続く場合に行う治療を挙げていきます。
咬み合わせの調整
被せ物や詰め物の高さが微妙に合わず、強く当たってしまうと痛みが出ます。放っておくと、偏頭痛などにもなるため、高さを削って調整してもらいましょう。噛み合わせる際に余分な負担がなくなり痛みが軽減します。
根管治療
強い痛みがあり、冷たいものや温かいものでしみる場合やズキズキとした痛みが続く場合、神経が炎症や感染を起こしている可能性があります。歯の中の歯髄(神経)を取り除く抜髄を行った後、その神経が入っていた根の中をきれいにする根管治療を行います。細菌感染している部分を除去し、綺麗に清掃した後、薬剤を詰めて被せ物を行います。
消炎処置と投薬
神経の炎症が初期段階であれば、抗炎症薬や抗生物質を処方して炎症を抑える場合もあります。痛みが強い場合、一時的にロキソプロフェンなどの痛み止めが処方されることもあります。用法や用量は正しく守りましょう。
再治療
詰め物や被せ物の内部に再感染が起きている場合も痛むことがあります。その場合は、再度外して治療した上で、新たに作製し直す必要があります。根の先に膿がたまっている場合には、再根管治療や歯根端切除などの外科的処置を行わなければならないこともあります。
歯周病のチェックと治療
歯の痛みと思っていた原因が、実は歯周病の進行による歯ぐきの炎症で、それにより歯が揺れていたというケースもあります。歯周病は放っておくと歯を失ってしまうため、歯周ポケットの洗浄や歯石除去など歯周治療を行います。
痛みを我慢して放置すると、症状が悪化したり、進行して抜歯が必要になる可能性もあります。目安としては痛みが1週間以上続いたり、治まらずにだんだん強くなる場合です。また、周囲の歯茎の部分が腫れてきたり、その部分のみ赤い場合も同様です。気になる症状があれば歯科医院を再受診して、歯科医師やスタッフへ質問し、痛みの原因を突き止め、対処する必要があります。
虫歯治療後の痛みに関するQ&A
虫歯治療後の痛みは、神経が一時的に反応する、神経が炎症を起こす、詰め物が歯の内側を圧迫する、虫歯が取り残される等の理由が考えられます。
根管治療は、神経が死んでいる重度の虫歯に対する処置で、神経を取り除き、神経の入っていた管を清掃し、細菌を除去し、薬剤を充填する治療法です。
1ヶ月経過しても痛みが治まらない場合は、可能な限り早く歯科医院に再診を求めることが重要です。治療を行った歯科医に再度受診すると、早く痛みの原因に対処できます。
痛みがある時には激しいスポーツや飲酒、入浴等を避けることが推奨されます。これらの行動は血行を良くし、血流が増えると痛みも増幅する可能性があります。
噛むと痛む場合、被せ物の高さが合わない可能性があるため、歯科医院で診察を受けることが推奨されます。
まとめ
麻酔をして歯を削ったり、時には神経を取り除いたりする虫歯治療ですが、処置中の音や振動、不安な気持ちを乗り越えて治療に臨んでくださった患者さんのお気持ちを私は理解しているつもりです。治療後に痛みやしみる症状が出ると大丈夫なのかと心配になりますが、神経に近い部分の処置をした場合や神経を取った後は、一時的に痛みや違和感が出ることがあります。ほとんどの場合数日で少しずつ落ち着いていきますし、その痛みは歯の中で組織が修復され、刺激から守る準備をしているサインです。虫歯の治療後に痛みが生じないことがベストですが、痛みが出た場合は、ご自宅で痛み止めを正しく使い、冷たいタオルで頬を優しく冷やすなど無理のない範囲で応急処置を行い、治療後すぐは熱いものや冷たいものを避け、治した歯を触ったり噛んだりしないようにすることが大切です。
虫歯治療後に痛みが出る理由についての研究結果を紹介します。
1. 【Cardoso et al. (2020)】によると、従来の虫歯除去治療はしばしば痛みや恐怖を伴うため、より保守的で快適な治療法への移行が進んでいます。この体系的レビューでは、化学機械的方法やレーザーなどの代替方法が、痛みを軽減し、患者にとって快適な治療体験を提供する可能性が示されています。
2. 【Ghaderi et al. (2020)】の研究では、虫歯の色や範囲、治療前の痛みが、乳歯の歯髄状態を判断する際の臨床的な診断ツールとしての潜在的な能力を持つことが示されています。この研究は、治療前の痛みの有無が治療後の痛みの程度を予測する可能性があることを示唆しています。
これらの研究によれば、虫歯治療後の痛みは、治療法や虫歯の特性によって異なる可能性があります。患者の痛みを軽減するためには、代替の治療法を検討することや、治療前の痛みの評価を重視することが有効であると考えられます。