マウスピース矯正で噛み合わせが悪くなることはある?原因と対処法を解説
マウスピース矯正を始めてから奥歯の噛み合わせが悪くなる、治療前より噛みにくいと不安を感じる方はおられるでしょう。矯正途中で一時的に噛み合わせが変化し、治療中や治療後に噛み合わせの調整が必要ということもあり得ます。一時的に噛み合わせが悪くなるというケースはあります。一方で、奥歯が接触しない臼歯部開咬や、予定通り歯が動いていないのであれば、歯科医師による確認や追加治療をすることも考えられます。
噛み合わせが悪くなるのは失敗?と思うかもしれませんが、違和感があるからといえ、治療に失敗しているわけではなく、一時的な変化か、治療計画の修正が必要かを適切に判断しましょう。この記事では、マウスピース矯正で噛み合わせが悪くなる原因や、違和感を感じたときの対処法、トラブルを防ぐポイントについて詳しく解説します。
目次
マウスピース矯正で噛み合わせが悪くなることはある?
マウスピース矯正では、治療中に噛み合わせが変化することがあります。そもそも矯正治療とは、現在の歯の位置から目標とする位置へ歯を移動させる治療で、完成した噛み合わせになるまで複数の段階があり、途中経過で上下の歯が噛み合う場所が変わるのは不自然ではありません。治療前には右側の奥歯が強く接触していた人でも、歯の移動によって途中から左側が先に当たるようになることがあり、前歯の位置を動かしている途中で、一時的に奥歯の接触が弱くなることも考えられます。
治療開始前と噛み方が違うのが異常ではなく、歯が段階的に移動していく過程では上下の歯の接触位置が変わるため、一時的な違和感が生じることがあります。ただし、治療計画から歯の動きがずれていたり、奥歯が長期間接触しなければ、そのまま経過を見ないで歯科医師による評価が必要です。噛み合わせが悪くなる可能性はありますが、その背景は人により異なるため、違和感があれば仕方ないと決めつけず、原因の確認が重要です。
マウスピース矯正で噛み合わせが悪くなる主な原因
なぜマウスピース矯正で噛み合わせが悪くなったと感じるのか、代表的な原因を見ていきましょう。
1.歯を動かしている途中だから
矯正治療中は理想の歯並びに向けて歯が移動している途中です。歯列を広げてから前歯を後方に移動させる治療では、すべての歯が同時に完成位置へ移動するわけではありません。治療計画に沿って順番に動かすため、一時的に接触する歯が少なくなり、特定の歯だけが当たりやすくなります。このような噛み合わせの変化は、計画通りの途中経過として起こることもありますが、問題がないかどうかは患者さん自身では判断しにくいため、違和感が強ければ担当医に確認しましょう。
2.マウスピースと実際の歯の動きにズレが生じている
マウスピース矯正は、事前に作製した治療計画に沿ってアライナーを交換し、少しずつ歯を動かしますが、コンピューター上で計画した歯の移動と、実際に起きる歯の移動が完全に一致するとは限りません。マウスピースが歯から浮いている、交換するたびにフィットが悪くなった場合には、計画と実際の歯の位置にズレが生じている可能性があります。ズレが大きくなると特定の歯だけが強く当たり、左右どちらかで噛みにくくなり、奥歯が噛み合わなかったり、次のマウスピースが入りにくいというトラブルにつながります。
3.マウスピースの装着状況が治療計画と合っていない
マウスピース矯正は、患者さん自身が装置を取り外せる点がメリットですが、指示された装着方法を守れなければ、治療結果に影響します。装着時間が不足すると、予定していた位置まで歯が移動しないまま次の段階へ進むと、徐々にズレが大きくなり、痛みや浮きという原因になります。適切な装着時間や交換時期は治療システムや症例によって異なるため、検索して情報を見つけても、勝手に判断せず、担当医から指示された装着方法を守りましょう。
4.奥歯が噛み合わない臼歯部開咬が生じている
マウスピース矯正の噛み合わせで特に知られているのが、前歯は接触するのに奥歯が接触しない臼歯部開咬です。食事の際に奥歯で食べ物をすり潰せない、前歯ばかり当たる場合には、臼歯部開咬が起きている可能性があります。歯の咬合面を装置が覆う影響や歯の垂直方向の移動、歯列を広げる治療など、複数の要素が臼歯部開咬に関係すると考えられます。ただし、原因は一つとは限らず、歯の位置以外に、前歯の早期接触、治療前の噛み合わせ、治療計画などを含めて診断しなければなりません。
5.特定の歯が先に当たっている
口を閉じたときに一部の歯だけが先に接触することを早期接触と呼びます。たとえば奥歯の1本が先に当たるとその位置を避けるように下顎が動き、顎の位置が定まらず左右どちらかにずれ、噛むと滑る場合があります。マウスピース矯正後の違和感の症状で多いのが、片側で噛めない、噛む位置がわからない、噛むと滑るなどです。早期接触は見た目の歯並びだけでは判断しにくく、実際に上下の歯がどこで接触しているか診察が必要です。
6.もともとの不正咬合や骨格的な問題が複雑である
すべての噛み合わせをマウスピース矯正のみで改善できるわけではありません。軽度から中等度の歯並びや噛み合わせであれば選択肢になりますが、骨格的な問題や複雑な不正咬合では、ワイヤー矯正やその他の治療を組み合わせるケースもあります。患者さんの状態を最終的な噛み合わせまで、マウスピース矯正で適切に治療できるかが重要です。
7.マウスピースが破損・変形している
マウスピースが変形すると、予定していた力を歯に加えにくくなります。強い力をかけて外したり、ひびが入ったり、高温のお湯で洗ったり、ケースに入れず変形させた場合には、まだ装着できるから大丈夫と判断せず、歯科医院へ連絡しましょう。
噛み合わせが悪くなったと感じやすい症状
マウスピース矯正中の噛み合わせの違和感は、人によって表現が異なります。気になる症状があれば、チェックしましょう。
- 奥歯が上下で接触しない
- 前歯ばかり強く当たる
- 右または左だけで噛みにくい
- 以前とは違う場所が最初に当たる
- 口を閉じるたびに顎の位置が変わる
- 噛むと上下の歯が滑る感じがする
- 食べ物を奥歯ですり潰しにくい
- 顎に痛みや疲労感がある
- 口を開けにくい
- 外したあとも噛み合わせの違和感が続く
前歯のみ当たって奥歯が全く当たらない、食事に支障が出ている、顎の痛みや開口しにくさを伴う場合は、次回の定期受診ではなく、すぐに担当医へ相談することをおすすめします。
一時的な違和感と治療が必要な状態の違い
マウスピース矯正中に噛み合わせが変わっても、すべてがトラブルではありません。歯が移動している時期は交換直後などにいつもと噛み方が違うと感じることがありますが、次のような状態では歯科医師に確認しましょう。
| 気になる症状 | 考えられる可能性 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 噛み合わせの違和感が長く続く | 歯の動きが治療計画とずれている | 違和感が続く場合は、担当医に相談 |
| 日ごとに噛みにくくなっている | 噛み合わせが徐々に悪化している | 次の受診日を待たず、歯科医院へ連絡 |
| 奥歯がほとんど当たらない | 奥歯が噛み合わない臼歯部開咬の | 早めに噛み合わせを確認 |
| 一部の歯だけ強く当たる | 特定の歯に負担が集中している | 自分で削らず、担当医に調整を依頼 |
| 食事がしにくい | 食べ物を十分に噛めていない | 食事に支障があると担当医に相談 |
| 顎が痛い、疲れる | 顎の関節や筋肉に負担がかかっている | 痛みを我慢せず、早めに受診 |
| マウスピースが歯から浮いている | マウスピースと歯の位置が合っていない | 無理に押し込まず、担当医に確認 |
| 次のマウスピースが入らない | 歯が予定した位置まで動いていない | 自己判断で交換せず、歯科医院へ相談 |
| 治療終了が近いのに噛み合わない | 追加のマウスピースや調整が必要 | 治療を終える前に、噛み合わせを確認 |
一時的な変化かどうかは、どの歯をどの順番で動かしているかによっても状況が異なります。担当医が治療計画と現在の口腔内を照らし合わせて判断することが重要です。
噛み合わせが悪くなったときの対処法
噛み合わせの違和感に気づいた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
担当の歯科医師・矯正歯科医へ相談する
最も重要なのは、勝手に判断して治療を変更せず、まず担当医に相談することです。いつから違和感があるか、どの歯が当たるか、右と左のどちらが噛みにくいか、マウスピースを外したときも噛みにくいか、食事に支障があるか、顎の痛みや開けにくさがあるかという症状を簡潔に伝えると診察に役立ちます。
マウスピースのフィットを確認する
歯とマウスピースの間に大きな隙間ができていないか確認しましょう。ただし、多少の隙間が治療上問題になるかはケースによって異なります。浮いているから次の段階へ進もう、前のマウスピースに戻そうと判断せず、写真などを添えて担当医に相談しましょう。
必要に応じて再スキャン・追加アライナーを行う
予定した歯の動きと実際の状態にズレが生じた場合には、口腔内を再スキャンして現在の歯並びを記録し、新しい治療計画を立て、追加アライナを作製します。マウスピース矯正では、最初に作った枚数をすべて使用すれば必ず治療終了ではありません。歯並び以外に、上下の歯の接触まで確認して治療を仕上げることが重要です。
ゴムやアタッチメントなどを使用する
噛み合わせの状態により、アライナー以外に、顎間ゴム、アタッチメント、追加アライナーなどを用いる場合があります。どの方法が適しているかは噛み合わせの状態によって異なるため、すべての患者さんに同じ対応は行いません。
必要なら治療計画そのものを見直す
噛み合わせの問題が大きい場合は、マウスピースの追加だけではなく治療計画そのものを見直します。特に、骨格的な問題、顎の位置、補綴物の状態、複雑な不正咬合などが関係していれば、矯正治療以外の診査も必要です。症状が改善しない場合には、矯正を専門的に行っている歯科医師などにセカンドオピニオンを求めることも一つの選択肢です。
自分で噛み合わせを調整してはいけない理由
噛み合わせに違和感があると、当たる歯を少し削れば治る?と思う方もいるかもしれませんが、患者さん自身が歯やマウスピースを削って調整するのは避けましょう。強く当たっている歯が本当の原因とは限らず、歯の位置がずれて1本だけ先に当たっている場合ならば、その歯だけを削っても根本的な解決にはなりません。削った歯は元には戻せないため、不適切な調整によって別の噛み合わせのトラブルを生む可能性があります。
マウスピースを自分で切ることや、勝手に装着時間を短くすること、次のアライナーへ早く交換、前のアライナーへ勝手に戻るという対応も避けましょう。噛み合わせに問題があると感じた場合、原因確認が先決です。
噛み合わせのトラブルを防ぐためのポイント
噛み合わせの変化を完全に防げませんが、治療計画から大きくずれるリスクを減らすためにできることがあります。
| 注意するポイント | 理由 | 具体的な行動 |
|---|---|---|
| 指示された装着方法を守る | 装着時間が不足すると、歯が計画通りに動かない可能性があります。 | 食事や歯磨き以外はできるだけ装着し、交換時期も担当医の指示に従う |
| 定期受診を自己判断で飛ばさない | 歯の動きや噛み合わせ、歯・歯ぐきのトラブルは自分では判断しにくいためです。 | マウスピースを自宅で交換できても、決められた日に受診する |
| 歯並びだけでなく噛み合わせも確認 | 前歯がきれいに並んでも、上下の歯が正しく噛み合っているとは限りません。 | 治療終了前に奥歯で噛めるか、特定の歯だけ強く当たらないかを確認 |
奥歯は左右とも噛めているか、前歯だけが強く当たらないか、食事で違和感はないかなどを確認しましょう。
よくあるご質問
マウスピース矯正の噛み合わせが悪くなる件についてよくあるご質問をまとめました。
マウスピース矯正で噛み合わせが悪くなるのは失敗ですか?
必ずしも失敗とは限りません。歯を移動させている途中では、一時的に上下の歯の接触位置が変わることがあります。一方、治療計画とのズレや臼歯部開咬などが生じているケースもあるため、違和感が続く場合は担当医に確認しましょう。
奥歯が噛み合わなくなったのは大丈夫ですか?
前歯は接触するのに奥歯が接触しない場合、臼歯部開咬が生じている可能性があります。自然経過のケースもあれば、追加アライナーやゴムなどによる調整が必要になるケースもあります。勝手に判断して様子を見るのではなく、担当医に相談してください。
治療途中に噛み合わせが変なのは普通ですか?
一時的な噛み合わせの変化は起こり得ます。歯は順番に移動するため、完成した噛み合わせになる前の段階では接触位置が変わることがあるからです。ただし、強い痛みがある、奥歯で噛めない状態が続く、食事に困る、マウスピースが大きく浮くといった場合には早めに相談しましょう。
噛み合わせが悪くなったらマウスピースを外したほうがよいですか?
勝手に装着を中止するのはおすすめできません。装着を突然やめると歯が動いたり、治療計画からさらにずれる可能性があります。まず担当医に連絡し、現在の分を使用するのか、交換を延期するのかなど、具体的な指示を受けましょう。
マウスピース矯正後の噛み合わせは治せますか?
原因によっては改善が期待できます。治療途中のズレであれば追加アライナー、アタッチメント、顎間ゴムなどで調整することがあります。臼歯部開咬の場合は、垂直方向のゴムを用いますが、骨格や顎関節、補綴物など別の要因が関係している場合には、矯正治療以外の状態を確認しなければなりません。
まとめ
マウスピース矯正では、歯を動かす途中で一時的に噛み合わせが変化することがあるため、治療前と噛み方が違うと感じても、それだけで治療が失敗しているとはいえません。噛み合わせが悪くなる背景には、治療途中の一時的な歯の移動、治療計画と実際の歯の移動のズレ、マウスピースの装着状況、奥歯が接触しない臼歯部開咬、一部の歯の早期接触、複雑な不正咬合、マウスピースの破損・変形など、さまざまな原因が考えられます。噛み合わせが悪くなるものだからと放置しないことが重要です。
奥歯が噛めない状態が続く、前歯だけが強く当たる、食事がしにくい、顎が痛い、マウスピースが大きく浮く場合には、早めに担当の歯科医師や矯正歯科医へ相談しましょう。噛み合わせが気になるからと、自分で歯やマウスピースを削ったり、装着時間や交換時期を変更するのは避けてください。矯正治療では、きれいな歯並びという見た目以外で、治療終了時に上下の歯が適切に噛み合っているかを確認することが大切です。これからマウスピース矯正を検討する場合も、治療方法や費用だけでなく、最終的な噛み合わせがどうか、治療計画からずれた場合にどのように対応するかまで予め知ったうえで治療を始めるとよいでしょう。

