子供のうちから歯並びを整えてあげたいと思う一方、「本当に矯正した方がいい?」「今から始める必要ある?」と迷う保護者の方も多いのではないでしょうか。小児矯正は、すべての子供に必要ではありません。歯並びや噛み合わせ、顎の成長状態によって、早めに治療を検討した方がよいケース、しばらく様子を見てよいケースもあります。

本記事では、子供が矯正した方がいいケースと、すぐに行う必要がないケースについてわかりやすく解説します。迷っている方は、治療を検討する際の参考にしてください。

子供は矯正した方がいい?まず結論

子供の矯正について、結論から言うと、全員に必要ではありません。ただし、成長期だからこそ対応しやすい噛み合わせや顎の問題もあるため、気になる症状があれば今の状態を診断してもらうことが大切です。

小児期からの矯正で押さえるべきポイント

子供は成長発育の途中にあるため、上下の顎の骨のバランスや口の機能に影響する症例では、小児期から歯科矯正を開始した方がよい場合があります。まず押さえておきたいポイントを3つ挙げます。

  • 歯並びが気になると、すぐ矯正ではない
  • まだ子供だから様子見でよいとは限らない
  • 早めに相談しても、治療開始は数年後になることがある

症状によっては早期治療が有効ですが、必要性と開始時期は一人ひとり異なるということを覚えておきましょう。

子供が矯正した方がいいと考えられるケース

小児矯正を積極的に検討した方がよいのは、前歯が少し曲がっているという見た目だけのケースではありません。特に、顎の成長や噛み合わせ、永久歯の生え方に影響する問題がある場合は、早めの受診が重要です。たとえば、今から挙げるような歯並びや癖が見られる場合は、歯科医院へ相談しましょう。

状態や症状 特徴
反対咬合(受け口) 下の前歯が上の前歯より前に出ている
交叉咬合 左右どちらかの上下の歯の噛み合わせが逆になっている
開咬 奥歯を噛み合わせても、上下の前歯の間にすき間ができる
叢生(そうせい) 歯が重なったり、デコボコに生えたりしている
強い出っ歯 上の前歯が大きく前に出ており、口を閉じにくい
顎の左右のずれ 顎が左右どちらかにずれて見え、噛み合わせにも偏りがある
永久歯の生え方の異常 永久歯がなかなか生えてこない、または本来とは違う位置から生えてくる
口周りの癖・習慣 指しゃぶり、舌で前歯を押す癖、口呼吸などが長期間続いている

顎の発達に影響が出る不正咬合は、早めの相談が勧められますが、早めの受診と、すぐ装置を使用するというのは同じではありません。診察した結果、経過観察や、半年後の受診、永久歯が生えてから判断となることもあります。早期相談の目的は、むやみに矯正治療を早めるという意味合いではなく、成長を利用できる時期や、治療した方がよいタイミングを逃さないことです。

すぐに矯正しなくてもよいケースもある

子供の歯並びには、生え替わりの途中だからこそ一時的に乱れて見えるものがあります。上の前歯が生え始めた時期には、中央にすき間ができたり、歯が八の字のように開いて見えますが、隣の歯や犬歯が生えてくる過程で自然に閉じることも一部であるため、今すぐしないと手遅れになると焦らなくて大丈夫です。今から挙げるようなケースは、治療を一時的に見送ることも選択肢になります。

  • 現時点では自然な生え替わりの範囲と診断された
  • 本人が装置の使用を強く嫌がり、治療への協力が難しい
  • 毎日の装着時間やケアを守ることが難しい
  • 受験や部活動、習い事などで通院や装置管理が大きな負担になる
  • 治療目的や期間、費用について十分に納得できていない

小児矯正では、本人の協力、装置の管理、保護者のサポート、生活との両立が可能かどうかというのは、重要な判断材料になります。治療への協力が難しければ、開始時期を見直すという考え方もあります。現在は経過観察でも、成長や永久歯への生え替わりを確認し、適切なタイミングで再度診断していくということが重要です。

子供のうちに矯正する主なメリット

子供の矯正治療の大きな特徴は、顎や顔面が成長している時期を利用できる可能性があることです。成人矯正では、基本的にはすでに生えている歯を移動させて歯並びや噛み合わせを整えますが、成長期の子供では、顎の成長や永久歯が生えるスペースを考慮しながら治療計画を立てられます。期待できる具体的なメリットを挙げてみましょう。

  • 顎の成長を利用して上下のバランスを整えやすい
  • 永久歯が生えるスペースを確保できる
  • 噛み合わせのずれが顎の成長に及ぼす影響を抑えられる
  • 指しゃぶりや舌癖などを見直すきっかけになる
  • 永久歯の萌出異常や先天欠如などを早く発見できる
  • 定期的な口腔管理を通じて、歯磨きやむし歯予防への意識を高めやすい

顎の骨のバランスを整え、症例によって永久歯のスペースを確保し、抜歯を避けられる場合があるのは、小児期から治療するメリットでしょう。ただし、子供のうちに矯正すれば必ず抜歯を避けられる、小児矯正をすれば大人になってからは不要とは限りません。顎の大きさや歯の大きさ、成長方向、永久歯の位置などには個人差があります。メリットはあくまでその可能性があると捉え、具体的に自分の子供ではどのようなメリットが期待できるのかを担当医に確認してみましょう。

子供の矯正にはデメリットや負担もある

矯正治療はメリットだけではありません。長期間の治療、自費診療となる費用、装置による違和感、歯磨きの難しさ、定期通院などの負担があります。子供の場合は、さらに本人の協力も重要です。

取り外し式の装置は、歯科医師から指示された装着方法や時間を守らなければ計画した効果を得にくく、固定式の装置は歯磨きが難しくなりむし歯を防ぐための丁寧な口腔ケアが必要です。また、小児期に治療したため、その後の成長による変化を完全に予測できるわけではありません。

成長に応じて治療計画を変更したり、永久歯が生えそろった後に追加治療が必要になることもあります。治療前には何をゴールにする治療なのかを確認しておきましょう。顎の成長を整えることが目的か、永久歯のスペースを確保することが目的か、最終的な歯並びまで整える治療かによって、期間や装置、追加治療の可能性が変わります。

子供の矯正は何歳から始めるのがいい?

7歳、もしくは永久歯が生えたら矯正を始めるべきと聞くことがありますが、すべての子供に共通する開始年齢はありません。成長期に行うことが適していますが、幼児では治療そのものが難しく、小学生から中学生に治療を開始するケースが多いです。

反対咬合の場合

反対咬合については、4~5歳ごろになると顎の大きさの問題か、歯の傾きが原因かを詳しく調べ、治療できる場合があります。それ以前も定期的に診査してもらうことが大切とされているため、適切な時期は症状によって異なります。

受け口や交叉咬合の場合

受け口や交叉咬合など、顎の成長との関係が強いケースでは比較的早くから評価することがありますが、軽度のガタつきや前歯のすき間では、生え替わりを待って判断することもあります。

年齢だけではなく、歯の生え替わり、顎の成長、噛み合わせ、本人の協力度をセットで考えてください。迷っていれば、今始めるべきかということ以外に、治療せずに経過を見ることができるか、半年や1年待った場合に何か問題があるかと尋ねてみましょう。治療をする場合としない場合の両方を説明してもらうことで、判断しやすくなります。

子供は矯正した方がいいかを判断するチェックポイント

家庭だけで矯正の必要性を判断することはできませんが、歯科医院へ相談する目安はあります。今から挙げる項目に当てはまる場合は、一度相談してみるとよいでしょう。

  • 学校歯科健診で歯並びや噛み合わせを指摘された
  • 受け口、出っ歯、開咬、交叉咬合が目立つ
  • 前歯で食べ物を噛み切りにくそう
  • 口を閉じにくく、いつも口が開いている
  • 顎が左右にずれているように見える
  • 永久歯が生えるスペースが足りなそう
  • 乳歯が抜けた後、永久歯がなかなか生えてこない
  • 永久歯が本来とは違う位置から生えてきた
  • 指しゃぶり、舌を押し出す癖、頬杖などが続いている
  • 歯並びのために歯磨きがしにくい
  • 本人が歯並びや口元を気にしている

一つ当てはまったからといって、すぐ必要という意味ではありません。逆に、見た目では大きな問題がなさそうでも、レントゲンなどで永久歯の位置や本数に問題が見つかる場合があります。チェックリストは診断のためではなく、専門家に相談するきっかけとしてご活用ください。

口呼吸や舌の癖がある場合は矯正だけで考えない

子供の歯並びには、歯や顎だけでなく、唇・舌・頬の使い方、呼吸、飲み込み方などが関係する場合があります。ここで注意したいのは、口の機能を育てるトレーニングと歯列矯正は同じ治療ではないという点です。

口腔機能発達不全症

口腔機能発達不全症とは、お口の働きである食べたり、話したり、呼吸を助ける役割が年齢相応に発達していない状態です。口腔機能発達不全症と診断されれば、食べる・話すなどの基本的な口の機能を向上させる治療を行いますが、装置によって歯並びを改善する歯列矯正とは別のものです。口腔機能が改善した結果、歯並びにも変化が生じることはありますが、口腔機能発達不全症の治療自体は歯並びを整えるという目的ではありません。

何が歯並びや噛み合わせに影響しているかを診査し、必要に応じて口腔機能へのアプローチ、生活習慣の見直し、経過観察、矯正治療などを組み合わせて考えます。口呼吸だから必ず矯正が必要、舌癖だからこの装置だけで歯並びが治ると単純に判断しないようにしましょう。

矯正相談で確認したい7つの質問

子供の矯正で後悔を減らすためには、治療を始める前の説明をしっかりと聞くことです。相談時には、今から挙げる7つの質問を確認しておくと判断しやすいでしょう。

  1. 今すぐ治療が必要ですか?経過観察はできますか?
  2. 今治療する目的は、顎の成長・スペース確保・歯並び改善のどれですか?
  3. 今治療しなかった場合、どのような変化が予想されますか?
  4. 小児期の治療後、永久歯がそろってから追加治療が必要になる可能性はありますか?
  5. 使用する装置と、家庭で必要な管理は何ですか?
  6. 治療期間、総額の目安、追加費用が発生する条件は何ですか?
  7. 別の治療法や、開始時期を遅らせる選択肢はありますか?

矯正歯科治療は保険適用外ですが、厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常や、一定の条件を満たす顎変形症などでは、保険診療の対象になる場合があります。保険適用となる治療には条件があり、治療できる医療機関にも要件があります。カウンセリングで十分な説明を受けたうえで検討し、不安があれば別の医療機関で相談するセカンドオピニオンを受けることも選択してください。

よくあるご質問

歯並びが少しガタガタしているだけでも矯正した方がいいですか?

必ずしも必要とは限りません。生え替わりの途中では一時的に歯並びが乱れることがありますが、永久歯が並ぶスペースが明らかに不足している場合などは治療を検討することがあります。見た目だけでは判断できないため、気になる場合は歯科医院で確認しましょう。

子供の矯正をしないと、必ず大人になって困りますか?

問題が起こるわけではありません。軽度の歯並びの乱れで、大きな機能的問題がないケースもあります。一方、顎の成長に影響する噛み合わせや永久歯の萌出異常などは、早めの対応が有利になる場合があります。

小児矯正をしておけば、大人になった時行わずに済みますか?

症例によります。小児期の治療だけで終了する場合もあれば、永久歯が生えそろった後に、歯並びを細かく整える治療が必要となる場合もあります。治療開始前に、小児期の治療でどこまで改善することが目標か確認しておきましょう。

本人が嫌がっていても、将来のために始めた方がいいですか?

緊急性や症状によって異なります。長期間の協力が必要になるため、本人が強く拒否している場合は、治療方法や開始時期を再検討することがあります。ただし、顎の成長や永久歯の生え方に関係する問題では、治療を待つことにもデメリットがあるため、勝手に決めず担当医と相談してください。

何歳までに相談すれば間に合いますか?

症状によって適切な時期が違うため、何歳までと決められません。受け口、交叉咬合、顎のずれ、永久歯が生えてこないなど気になる症状がある場合は、年齢だけで待たず、一度相談しておくことをおすすめします。

子供の歯並びが悪いと感じたら、まず何をすればいいですか?

小児歯科や矯正歯科で、現在の歯並び、噛み合わせ、永久歯の状態を確認してもらいましょう。相談したら必ず始めなければならないというわけではありません。診察を受けたうえで、治療、経過観察のどちらが適切なのかを比較することが大切です。

まとめ

子供は矯正した方がいいかという疑問に対して、すべての子供に当てはまる答えはありません。顎の成長や噛み合わせに問題がある場合、永久歯が生えるスペースや位置に問題がある場合役立つ可能性があります。一方で、生え替わりによる一時的な歯並びの変化で、すぐに治療しなくてもよいケースもあります。

大切なのは、矯正治療を早く始めることそのものではなく、必要な治療を、必要な時期に選ぶことです。

歯並びや噛み合わせが気になれば、歯科医院で現在の状態を確認してください。今治療するメリット、待つメリットと考えられるリスク、小児期の治療後に追加治療が必要になる可能性をを考えつつ、本人の気持ち、家庭でのサポート、学校生活、通院のしやすさ、費用まで含めて納得できる治療計画を選ぶことです。子供の矯正で後悔を減らす第一歩として、状態を知ること、必要であれば適切な治療時期を把握しておくことが重要です。