子供の矯正に健康保険は使える?保険適用になる症状と条件一覧

クローバー歯科クリニック豊中駅前院 歯科医師 松本 康裕

子供の矯正に健康保険は使える?

結論からいうと、一般的な小児矯正は原則として健康保険の適用外です。 出っ歯、受け口、ガタガタの歯並びなどがあるだけでは、通常は自由診療になります。

ただし、厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常や、一定の永久歯の萌出不全、手術を必要とする顎変形症など、国が定める条件を満たす場合には保険診療の対象になることがあります。

さらに、2026年6月から保険適用の対象が一部拡大され、18歳未満で連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因する咬合異常なども対象に追加されました。

この記事では、小児矯正が保険適用になる条件、対象となる症状、保険で治療できる歯科医院の条件、自費診療との違い、医療費控除についてわかりやすく解説します。

この記事を読むとわかること

  1. 一般的な小児矯正に健康保険が使えるのか
  2. 小児矯正が保険適用になる主な条件
  3. 2026年から新しく追加された対象
  4. 出っ歯や受け口は保険適用になるのか
  5. 永久歯が生えてこない場合の条件
  6. 保険診療を受けられる歯科医院の条件
  7. 保険適用にならない場合に利用できる医療費控除

「噛みにくいから保険」「子供だから保険」という仕組みではありません。
保険適用を判断するポイントは、歯並びの見た目よりも、その咬合異常の原因と治療内容です。

 

小児矯正には健康保険が使えるの?

小児矯正には健康保険が使えるの?の図解

一般的な小児矯正には、健康保険は使えません。

歯並びや噛み合わせを整える矯正治療は、原則として自由診療として扱われるためです。ただし、一定の疾患や症状に起因する咬合異常については例外的に保険診療が認められています。

「歯並びが悪いかどうか」だけで保険適用が決まるわけではありません。原因となる疾患や歯の状態、外科手術の必要性などが国の基準に該当するかを確認します。

たとえば、

  1. 歯がガタガタしている
  2. 出っ歯になっている
  3. 受け口になっている
  4. 前歯が噛み合わない
  5. 歯と歯の間に隙間がある

といった不正咬合があるだけでは、通常は保険適用にはなりません。

一方、その噛み合わせが国の定める疾患によって生じている場合などには、保険診療になる可能性があります。

まず、小児矯正で保険診療が検討される主なケースを整理してみましょう。
2026年度の制度改定も反映すると、次のように考えるとわかりやすくなります。

主なケース 保険適用の考え方
一般的な出っ歯・受け口・叢生など 原則として保険適用外
厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常 条件を満たせば保険適用
前歯・小臼歯の永久歯3歯以上の萌出不全 埋伏歯開窓術が必要などの条件を満たせば保険適用
手術を必要とする顎変形症 手術前後の矯正治療が保険適用
18歳未満で連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因する咬合異常 2026年度改定で対象に追加

ここで重要なのは、「症状の名前」だけで自己判断しないことです。
同じ受け口でも原因や治療計画によって保険適用になるケースとならないケースがあります。

一般的な子供の矯正治療は自由診療となるケースが多く、治療方法や費用は歯並びや顎の状態によって異なります。詳しくは子供の矯正治療についてをご覧ください。

どのような病気が原因なら小児矯正が保険適用になりますか?

厚生労働大臣が定める疾患によって咬合異常が生じている場合には、矯正治療が保険診療の対象になることがあります。

対象には、唇顎口蓋裂やダウン症候群、鎖骨頭蓋骨異形成など、顎や歯の発育・噛み合わせに影響を及ぼすさまざまな疾患が含まれます。

対象となる病気があるだけで自動的に矯正治療すべてが保険になるわけではありません。その疾患に「起因した咬合異常」であることがポイントです。

代表的な対象疾患には、

  • 唇顎口蓋裂
  • ゴールデンハー症候群
  • 鎖骨頭蓋骨異形成
  • トリーチャ・コリンズ症候群
  • ピエール・ロバン症候群
  • ダウン症候群
  • ターナー症候群
  • マルファン症候群
  • 6歯以上の先天性部分無歯症
  • CHARGE症候群
  • 頭蓋骨癒合症
  • 骨形成不全症
  • 成長ホルモン分泌不全性低身長症

などがあります。

2026年度の診療報酬改定では、原発性低リン血症性くる病、ロイス・ディーツ症候群なども対象に追加されています。

対象疾患は多いため、ここでは代表例を種類ごとに整理します。
正式な対象については、受診する歯科医院で最新の基準を確認してください。

分類 代表的な疾患例
口腔・顎顔面の先天異常 唇顎口蓋裂、顔面裂、小舌症、頭蓋骨癒合症など
染色体・遺伝性疾患など ダウン症候群、ターナー症候群、マルファン症候群など
骨・発育に関係する疾患 鎖骨頭蓋骨異形成、骨形成不全症、軟骨形成不全症など
歯の先天的欠如に関係するもの 6歯以上の先天性部分無歯症など
2026年度に追加された疾患 原発性低リン血症性くる病、ロイス・ディーツ症候群など

対象疾患の名称や条件は診療報酬改定によって変わることがあります。
インターネットの記事だけで判断せず、該当する可能性がある場合は矯正歯科へ相談してください。

厚生労働省では、一般的な歯科矯正治療は原則として保険給付の対象外としつつ、一定の疾患に起因する咬合異常や永久歯の萌出不全、顎変形症などについては保険診療の対象としています。

永久歯が生えてこない場合は保険適用になりますか?

永久歯が生えてこないだけでは、必ず保険適用になるわけではありません。

保険診療の対象となるのは、前歯および小臼歯の永久歯のうち3歯以上に萌出不全があり、それによって咬合異常が生じ、埋伏歯開窓術が必要なケースなど、一定の条件を満たす場合です。

「永久歯が3本生えてこない」というだけでは条件を満たすとは限りません。対象となる歯の種類や状態、外科的な処置の必要性まで診断します。

埋伏歯開窓術とは、歯ぐきや骨の中に埋まっている永久歯を萌出させるため、歯の一部を外科的に露出させる処置です。

その後、必要に応じて矯正装置を使い、埋まっている歯を適切な位置へ誘導していきます。

単に永久歯が生えるのが遅れているだけなのか、骨の中に埋伏しているのかは見た目だけではわかりません。レントゲンなどで永久歯の位置を確認する必要があります。

2026年から先天的に歯が足りない子供も保険適用になったのでしょうか?

2026年度の診療報酬改定では、18歳未満で連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因する咬合異常などが新たに保険適用の対象に加えられています。詳しくは厚生労働省の歯科矯正に関する告示をご確認ください。

以前の記事では「6歯以上の先天性部分無歯症」が中心に説明されることがありますが、2026年から対象が一部拡大しています。

「先天性欠如歯」とは、本来生えてくるはずの永久歯そのものが生まれつき作られていない状態です。

ここでポイントになるのは、

  1. 18歳未満である
  2. 先天的に永久歯が欠如している
  3. 連続して3歯以上欠如している
  4. その欠如によって咬合異常が生じている

といった条件です。

歯が3本足りなければすべて対象になるわけではなく、「連続しているか」「咬合異常との関係があるか」まで確認されます。

これは小児矯正を検討している家庭にとって、2026年から特に確認しておきたい制度変更です。

受け口や出っ歯がひどければ保険適用になりますか?

受け口や出っ歯が重度であっても、矯正治療だけで改善する場合は通常、自由診療になります。

ただし、顎の骨格的なずれが大きく、顎離断などの外科手術を必要とする「顎変形症」と診断された場合には、手術前後の矯正治療が保険診療になることがあります。

「受け口だから保険」ではなく、「手術を必要とする顎変形症として治療するかどうか」が判断のポイントです。

成長途中のお子さんでは、顎が今後どのように成長するかを観察することがあります。

特に骨格的な受け口では、成長によって下顎の突出が強くなる場合もあるため、小児期から経過を確認し、将来の治療方針を検討することがあります。

よく相談される歯並びについて、保険適用の考え方を整理してみましょう。
見た目の程度だけでは判断できないことがわかります。

歯並び・症状 一般的な保険適用 例外
出っ歯 原則適用外 対象疾患などが原因の場合は可能性あり
受け口 原則適用外 手術を必要とする顎変形症など
歯のガタガタ 原則適用外 対象疾患に起因する場合など
開咬 原則適用外 対象疾患や顎変形症など条件による
永久歯が生えてこない 通常は適用外 3歯以上の萌出不全など一定条件を満たす場合

「重症だから保険が使える」という仕組みではない点には注意が必要です。
症状の程度ではなく、国が定める診断基準・原因・治療方法に当てはまるかで判断されます。

保険適用にならない場合でも、お子さんの歯並びや顎の成長に合わせてさまざまな矯正方法を検討できます。詳しくは豊中の矯正歯科・歯列矯正についてをご覧ください。

保険適用の小児矯正はどこの歯科医院でも受けられますか?

いいえ。保険適用となる症状であっても、どの歯科医院でも保険で矯正治療を受けられるわけではありません。

保険の矯正治療を行うには、厚生労働大臣が定める施設基準を満たし、地方厚生(支)局へ届け出をしている医療機関で治療を受ける必要があります。

「症状が保険対象か」と「その歯科医院で保険治療ができるか」は別の確認事項です。

日本矯正歯科学会では、対象医療機関を探す際に地方厚生局の「施設基準届出受理医療機関名簿」から、

「矯診」:歯科矯正診断料を算定できる指定医療機関
「顎診」:顎口腔機能診断料を算定できる指定医療機関

を確認する方法を案内しています。

該当する可能性がある場合は、まず現在通院している歯科医院や矯正歯科で相談し、必要に応じて対応可能な医療機関を紹介してもらう方法もあります。

日本矯正歯科学会では、矯正歯科治療が保険診療の対象になる条件や、保険診療を行える医療機関の条件について案内しています。

保険適用になると費用はどのくらい変わるのでしょうか?

保険診療になった場合は、自由診療の矯正費用を全額自己負担する場合とは費用の仕組みが異なります。

健康保険の自己負担割合に応じて窓口負担が決まり、自治体の子ども医療費助成制度などが利用できる場合もあります。

険適用になった場合の実際の自己負担額は、お子さんの年齢、治療内容、加入している健康保険、自治体の助成制度などによって異なります。

保険診療と一般的な自費の小児矯正では、費用の考え方が異なります。
違いを大まかに整理すると次のとおりです。

比較項目 保険診療 一般的な小児矯正
対象 国が定める条件を満たすケース 一般的な不正咬合
料金 診療報酬に基づく 歯科医院が設定
自己負担 健康保険の負担割合などによる 原則として全額自己負担
治療できる医院 施設基準を満たした医療機関 自費の矯正治療を行う歯科医院

自治体による子ども医療費助成の対象範囲は地域によって異なります。
保険矯正が対象になる場合でも、実際の自己負担額については受診する医療機関や自治体へ確認してください。

保険適用にならない小児矯正でも医療費控除は使えますか?

健康保険が使えないことと、医療費控除を受けられないことは同じではありません。

子供の成長や発育、噛み合わせなどの改善に必要な矯正治療では、自由診療であっても医療費控除の対象になる場合があります。

「保険適用外だから税金の控除も受けられない」と決めつける必要はありません。健康保険と医療費控除は別の制度です。

医療費控除では、その年に本人や生計を一にする家族が支払った医療費について、一定の条件を満たす場合に所得控除を受けられます。

対象になる可能性があるのは、

  1. 矯正治療費
  2. 診察・検査などの費用
  3. 通院のために必要となった公共交通機関の交通費

などです。

一方、見た目を整えることだけを目的とする治療では対象にならない場合があります。

治療費の領収書や通院記録は保管し、不明な場合は税務署などへ確認しましょう。

小児矯正の保険適用を確認するときは何を歯科医師に聞けばいいですか?

お子さんの矯正が保険対象になるか気になる場合は、カウンセリングで単に「保険は使えますか?」と聞くだけでなく、なぜ保険になる、あるいはならないのかまで確認すると理解しやすくなります。

保険適用の有無は、治療費の問題だけではなく、お子さんの不正咬合の原因を知る手がかりにもなります。

たとえば、

  1. この不正咬合の主な原因は何ですか?
  2. 厚生労働大臣が定める疾患に該当しますか?
  3. 永久歯の先天性欠如や萌出不全はありませんか?
  4. 顎変形症に該当する可能性はありますか?
  5. 保険診療が必要な場合、この医院で対応できますか?
  6. 対応できない場合、適切な医療機関を紹介してもらえますか?

と確認してみるとよいでしょう。

ここで大切なのは、「保険が使える医院を探す」ことから始めるのではなく、まずお子さんの状態が保険診療の対象なのかを正しく診断してもらうことです。

まとめ|小児矯正は原則保険適用外ですが、対象になる症状もあります

一般的な小児矯正は、原則として健康保険の適用外です。
出っ歯、受け口、歯のガタガタなどがあるだけでは、通常は自由診療となります。

一方、保険診療の対象になる可能性があるのは、

  1. 厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常
  2. 前歯・小臼歯の永久歯3歯以上の萌出不全で、埋伏歯開窓術が必要なケース
  3. 顎離断などの手術を必要とする顎変形症
  4. 18歳未満で連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因する咬合異常

などです。

特に最後の項目は、2026年度診療報酬改定で新たに追加された保険対象です。

また、症状が保険適用の条件を満たしていても、保険の矯正治療を行えるのは所定の施設基準を満たした医療機関に限られます。

「子供の噛み合わせがかなり悪いから保険が使えるのでは?」と考えるより、まずは歯科医院で、

  • 何が原因で不正咬合が起きているのか
  • 国が定める保険診療の条件に該当するのか

を確認することが大切です。

保険適用にならない場合でも、小児矯正は医療費控除の対象になる可能性があります。費用だけを理由に治療を諦める前に、保険制度や医療費控除を含めて歯科医院へ相談してみましょう。

関連ページ:クローバー歯科クリニック豊中駅前院の小児矯正