親知らずは抜いた方がいい?抜かなくていいケースと判断基準を解説
親知らずは必ず抜いた方がいいの?
いいえ。親知らずがあるからといって、必ず抜歯する必要はありません。正常に生えて噛み合わせに参加しており、きちんと歯磨きができ、周囲に問題がなければ残せる場合があります。一方、痛みや腫れを繰り返す、手前の歯に悪影響を与えている、虫歯や炎症を起こしている場合などは抜歯を検討します。
「親知らずがあると言われたけれど、抜いた方がいいの?」「痛くないのに抜歯する必要があるの?」と疑問に思う方は少なくありません。
親知らずを抜くかどうかは、単に「生えているか」「横向きか」だけでは決まりません。
日本歯科医師会や日本口腔外科学会でも、親知らずの状態を確認したうえで、抜歯が必要かどうかを判断する考え方が示されています。
反対に、親知らずの周囲で炎症を繰り返していたり、手前の歯を虫歯にする原因になっていたりすれば、症状が軽いうちに抜歯を検討することがあります。
つまり、重要なのは「親知らずがあるかどうか」ではなく、その親知らずを残すことで、今後もお口の健康を保てるかどうかです。
この記事を読むとわかること
- 親知らずを抜いた方がいいケース
- 抜かなくてもいい親知らずの特徴
- 横向き・斜めの親知らずの判断基準
- 完全に埋まっている親知らずの扱い
- 親知らずを残すメリット
- 抜歯をしない場合に考えられるリスク
- 親知らずを抜く方法やリスク
- 抜歯前にレントゲンやCTを撮影する理由
- 親知らずを抜くか迷ったときの考え方
「親知らずだから抜く」のではなく、抜くメリットと残すメリット、そして双方のリスクを比べて判断することが大切です。
目次
- 1 そもそも親知らずとはどんな歯?
- 2 親知らずを抜いた方がいいのはどんなケース?
- 3 斜め・横向きの親知らずは必ず抜くの?
- 4 完全に埋まっている親知らずも抜いた方がいい?
- 5 抜かなくてもいい親知らずにはどんな特徴がある?
- 6 親知らずを抜かずに残すメリットはある?
- 7 親知らずを抜かずに放置するとどうなる?
- 8 痛くない親知らずなら抜かなくてもいい?
- 9 親知らずの抜歯はどのように行うの?
- 10 抜歯前にレントゲンやCTを撮るのはなぜ?
- 11 親知らずを抜くリスクやデメリットは?
- 12 親知らずの抜歯にはどのくらいの費用・期間・通院回数がかかる?
- 13 親知らずを抜くかどうかはどうやって決める?
- 14 親知らずの抜歯の必要性に関するQ&A
- 15 まとめ|親知らずは「抜くか抜かないか」だけでなく、周囲の歯まで見て判断しよう
そもそも親知らずとはどんな歯?
親知らずは、前歯から数えて8番目にある永久歯で、「第三大臼歯」や「智歯」とも呼ばれます。一般的には10代後半から20代前半に生えることが多いものの、4本すべてが生えるとは限りません。また、顎の骨の中に埋まったままになっていることもあります。
親知らずは一番奥に生える永久歯で、生え方や本数には個人差があります。
日本歯科医師会では、親知らずを一番後ろに位置する第三大臼歯と説明しており、概ね10代後半から20代前半に生えるとしています。もともと親知らずがない方や、4本すべてが揃わない方もいます。
親知らずには、大きく分けると次のような生え方があります。
- まっすぐ生えている
→ 他の奥歯と同じように歯茎から出て、上下の歯と正常に噛み合っている状態です。 - 斜めに生えている
→ 手前の第二大臼歯の方向へ傾いて生えている状態です。一部分だけ歯茎から出ているケースもあります。 - 横向きに埋まっている
→ 親知らずがほぼ水平になり、顎の骨や歯茎の中に埋まっています。 - 完全に埋まっている
→ お口の中から親知らずが見えず、レントゲン撮影によって初めて存在がわかる場合があります。
生え方は抜歯を判断する一つの材料ですが、横向きだから必ず抜く、まっすぐだから必ず残す、という単純なものではありません。
親知らずの生え方によって、注意したいトラブルは変わります。
まずは「自分の親知らずがどのタイプなのか」を把握することが、抜歯を考える第一歩です。
| 親知らずの状態 | 起こりやすい問題 | 主な対応 |
|---|---|---|
| まっすぐ生えている | 一番奥のため磨き残しが起こることがある | 問題がなければ経過観察 |
| 一部だけ生えている | 歯茎の腫れ・智歯周囲炎・虫歯 | 状態によって抜歯を検討 |
| 斜め・横向き | 手前の歯の虫歯や炎症など | 周囲への影響を調べて判断 |
| 完全に埋まっている | 多くは無症状だが、まれに嚢胞などが生じることがある | 画像で確認しながら経過観察する場合もある |
親知らずの形だけではなく、虫歯や炎症の有無、手前の歯への影響まで確認して判断します。自分では見えない部分が多いため、レントゲンなどによる確認が重要になります。
親知らずを抜いた方がいいのはどんなケース?
親知らずを抜歯する主な理由は、痛みや腫れを繰り返している、親知らずや手前の歯が虫歯になっている、歯周組織に悪影響を与えている、嚢胞などの病変が認められるといった場合です。生えている向きだけではなく、「親知らずを残すことで周囲にどのような問題が起こるか」を見て判断します。
抜歯を考えるポイントは「生え方」よりも「現在または将来、周囲へ悪影響を与えるか」です。
1. 痛みや腫れを繰り返している
親知らずが中途半端に生えていると、歯と歯茎の間へ歯垢や食べ物が入り込み、炎症を起こすことがあります。
これを「智歯周囲炎」といいます。
炎症が強くなると、
歯茎が腫れる
奥歯の周辺が痛む
顔が腫れる
口を開けにくくなる
飲み込むと痛む
といった症状が出る場合があります。
日本口腔外科学会でも、完全に生えきらず歯茎が一部を覆っている親知らずは清掃しにくく、智歯周囲炎を起こしやすいと説明しています。
一度炎症が治まっても同じ場所で繰り返す場合には、原因となっている親知らずの抜歯を検討します。
2. 親知らずが虫歯になっている
親知らずはお口の一番奥にあるため、歯ブラシが届きにくい歯です。
そのため虫歯になっても気づきにくく、大きく進行してから見つかることがあります。
親知らずの位置によっては詰め物や被せ物による治療が難しく、再び虫歯になる可能性なども考えて抜歯を選択することがあります。
3. 手前の歯に悪影響が出ている
親知らずの問題を考えるとき、親知らずそのもの以上に大切にしたいのが、手前にある第二大臼歯を守ることです。横向きや斜めの親知らずでは、親知らずと第二大臼歯の間が非常に磨きにくくなることがあります。
日本口腔外科学会でも、斜めや横向きで一部だけ生えている親知らずでは、手前の第二大臼歯との間が清掃しにくくなり、虫歯などの原因になることがあると説明しています。
親知らずは状況によって抜歯できますが、第二大臼歯は長く噛むために残したい大切な永久歯です。
そのため、「親知らずを残せるか」だけでなく、「残すことで手前の歯を傷めないか」まで考えることが重要です。
4. 嚢胞などの病変がある
顎の骨の中に埋まった親知らずの周囲に、嚢胞と呼ばれる袋状の病変ができる場合があります。
嚢胞は自覚症状がないまま大きくなることもあり、レントゲン撮影で偶然発見されるケースがあります。日本口腔外科学会では、埋伏歯の周囲に生じることがある「含歯性嚢胞」についても解説しています。
このような病変が認められた場合は、状態に応じて抜歯や嚢胞の治療を検討します。
斜め・横向きの親知らずは必ず抜くの?
斜めや横向きだからという理由だけで、すべての親知らずを同じように抜歯するわけではありません。ただし、一部分がお口の中に出ている親知らずは汚れがたまりやすく、智歯周囲炎や手前の歯の虫歯などを起こしやすいため、抜歯が検討されることがあります。
横向きかどうかだけではなく、「周囲に問題を起こしているか」で判断します。
横向きの親知らずをレントゲンで見て、「横を向いているのだから早く抜かないといけないのでは?」と心配される方もいます。
しかし、確認するのは向きだけではありません。
例えば、
- 歯茎から一部だけ出ているか
- 腫れを繰り返しているか
- 歯磨きできる状態か
- 手前の歯が虫歯になっていないか
- 手前の歯の歯周組織に影響していないか
- 歯の根と神経との位置関係はどうか
などを総合的に確認します。
特に注意したいのは「少しだけ見えている横向きの親知らず」です。歯茎との境目から細菌が入りやすい一方、歯ブラシでは十分に清掃しにくいため、炎症を繰り返すことがあります。
横向きだから即抜歯と考えるより、横向きであることで何が起こっているのかを確認することが大切です。
完全に埋まっている親知らずも抜いた方がいい?
完全に歯茎や顎の骨の中へ埋まっており、お口の中と交通していない親知らずは、細菌による炎症を起こすリスクが比較的低く、周囲への悪影響がなければ抜かずに経過を見る場合があります。ただし、嚢胞などが生じることもあるため、必要に応じて画像で状態を確認します。
「埋まっている=必ず抜歯」でも、「埋まっている=絶対に安全」でもありません。
親知らずが一本も見えていないからといって、「親知らずがない」とは限りません。
顎の骨の中に完全に埋まっていることがあります。
このタイプの親知らずは、お口の中と交通していなければ、半分生えている親知らずに比べて細菌感染による炎症を起こすリスクは低いと考えられます。症状や周囲への悪影響がなければ、経過観察になることもあります。神奈川県歯科医師会も同様の考え方を紹介しています。
ただし、完全に埋まっている親知らずの周囲に嚢胞などができる可能性はあります。
そのため、「何も痛くないから、一生確認しなくてもいい」というわけではありません。
定期的な歯科受診の中で、必要に応じて画像による変化を確認します。
抜かなくてもいい親知らずにはどんな特徴がある?
正常に生えて上下で噛み合っており、十分に歯磨きができ、虫歯や歯周病などの問題がない親知らずは、必ずしも抜歯する必要はありません。また、完全に埋まっていて症状や病変がない場合も、状態によっては経過観察となります。
健康な状態を維持できる親知らずなら、残す選択肢があります。
抜かずに経過を見られる可能性があるのは、次のような親知らずです。
- まっすぐ生えている
→ 他の奥歯と同じように生え、周囲の歯に悪影響を与えていない状態です。 - 上下できちんと噛み合っている
→ 親知らずも噛むための歯として機能している場合があります。 - 十分に歯磨きできている
→ 一番奥まで歯ブラシが届き、歯垢を取り除けていることも重要です。 - 虫歯や歯周病がない
→ 現在病気がなく、今後も清掃しやすい状態であるかを確認します。 - 痛みや腫れを繰り返していない
→ 智歯周囲炎などを起こしていないことも判断材料になります。 - 周囲の歯や骨に問題がない
→ 手前の歯への悪影響や画像上の異常がないかも確認します。
この条件を満たしていれば、「親知らずだから」という理由だけで急いで抜く必要はない場合があります。
日本口腔外科学会も、正常に生えて機能している親知らずは、一般に抜歯しなくてもよいとしています。
「抜く・抜かない」を迷ったときは、生え方だけを見るより、次のような項目を並べて考えるとわかりやすくなります。ただし、実際の判断には診察や画像検査が必要です。
| 確認する項目 | 抜歯を検討しやすい状態 | 経過観察できる可能性がある状態 |
|---|---|---|
| 痛み・腫れ | 繰り返している | 症状がない |
| 虫歯 | 親知らずや手前の歯に問題がある | 虫歯がない |
| 清掃状態 | 歯磨きが難しく歯垢がたまりやすい | 十分に清掃できる |
| 周囲への影響 | 第二大臼歯などに悪影響がある | 悪影響がない |
| 画像上の病変 | 嚢胞などが認められる | 異常が認められない |
この表だけで自己判断するのではなく、親知らずの位置や歯根の形なども含めて歯科医師が確認します。特に下顎の埋伏した親知らずでは、抜歯そのものの難易度も重要な判断材料になります。
親知らずを抜かずに残すメリットはある?
健康で正常に機能している親知らずは、噛むための歯として利用できます。また、将来ほかの奥歯を失った場合に、治療計画によっては親知らずを利用できる可能性もあります。そのため、問題のない親知らずを「不要な歯」と決めつける必要はありません。
問題のない親知らずには、残しておく意味がある場合もあります。
親知らずというと、「どうせ使わない歯」というイメージがあるかもしれません。しかし、正常に生えて上下で噛み合っている場合には、ほかの奥歯と同じように噛む機能を担っています。
日本口腔外科学会では、正常に生えて機能している親知らずは抜歯しない場合があることや、将来の治療で利用できる可能性についても紹介しています。
ただし、将来利用できる可能性だけを理由に、問題のある親知らずを無理に残すわけではありません。残すメリットと、残すことで生じるリスクを比べることが大切です。
親知らずを抜かずに放置するとどうなる?
問題のある親知らずをそのままにしていると、智歯周囲炎、虫歯、手前の歯への悪影響などにつながる場合があります。一方、問題のない親知らずを歯科医院で定期的に確認しながら残すことは「放置」ではなく「経過観察」です。この違いを理解することが重要です。
「抜かないこと」と「放置すること」は同じではありません。
ここは親知らずについて考えるうえで、とても重要なポイントです。
歯科医師が状態を確認し、「今すぐ抜歯する必要はないので、定期的に確認しましょう」と判断した親知らずを残しておくことは、放置ではありません。これは経過観察です。
一方で、痛みや腫れを繰り返しているのに受診せずそのままにしている場合などは、症状が悪化することがあります。
問題のある親知らずでは、
- 智歯周囲炎を繰り返す
- 親知らずが虫歯になる
- 手前の歯が虫歯になる
- 歯茎や周囲組織に炎症が起こる
- 顔が腫れる
- 口を開けにくくなる
などのトラブルにつながる可能性があります。日本口腔外科学会でも、智歯周囲炎が周囲へ広がると顔の腫れや開口障害を生じることがあると説明しています。
親知らずを残す場合ほど、定期的な確認が重要になります。
痛くない親知らずなら抜かなくてもいい?
痛みがないから必ず残せるとは限りません。手前の歯の虫歯や歯周組織への影響、嚢胞などは、自覚症状がない状態で進む場合があります。一方、症状も病変もない親知らずを予防目的で一律に抜歯することについては、十分な根拠があるとは言い切れません。
「痛いかどうか」は重要ですが、それだけでは抜歯の必要性を判断できません。
「痛くない=問題なし」と考えたくなりますが、お口の中には自覚症状が出にくい変化もあります。例えば、親知らず自体は痛くなくても、その手前の第二大臼歯の後ろ側に虫歯ができていることがあります。
また、埋まった親知らずの周囲に嚢胞ができても、初期には気づかないことがあります。反対に、無症状で病変のない埋伏親知らずを、将来のトラブル予防だけを目的として一律に抜歯すべきかについては、考え方が分かれています。
英国NICEは病変のない埋伏親知らずの予防的抜歯を推奨しておらず、Cochraneレビューでも、無症状かつ病変のない埋伏親知らずについて、抜歯と保存のどちらが長期的に優れているかを判断する十分なエビデンスはないとしています。
そのため、「痛くないから絶対抜かない」「親知らずだから先に全部抜く」という二択ではなく、その方の状態を見て判断することが大切です。
親知らずの抜歯はどのように行うの?
まっすぐ生えている親知らずは、通常の抜歯に近い方法で抜けることがあります。一方、横向きや顎の骨に埋まっている親知らずでは、歯茎を切開したり、歯を分割したりして取り出す場合があります。抜歯方法は、生え方や歯根の形によって異なります。
親知らずの抜歯方法は「見えている歯」と「埋まっている歯」で大きく異なります。
まっすぐ生えている親知らずであれば、局所麻酔を行い、通常の抜歯器具を使って抜ける場合があります。
一方、横向きや深く埋まった親知らずでは、一般的に次のような処置が必要になることがあります。
- 局所麻酔を行う
- 必要に応じて歯茎を切開する
- 親知らずを覆う骨の一部を削る
- 親知らずを分割して取り出す
- 抜歯した部分を洗浄する
- 必要に応じて縫合する
すべての埋伏親知らずで同じ手術を行うわけではありません。生えている深さや向き、歯根の形などによって処置内容は変わります。
抜歯前にレントゲンやCTを撮るのはなぜ?
親知らずの抜歯では、生えている方向や深さだけでなく、歯根の形、周囲の骨、手前の歯との関係などを確認します。特に下顎の親知らずでは神経との位置関係が重要になるため、必要に応じてCTで立体的に確認することがあります。
画像検査は「抜けるかどうか」だけでなく、「どの程度安全に抜けるか」を判断するために行います。
お口の中を見ただけでは、親知らずの根の状態までは確認できません。
特に埋まっている親知らずでは、
- 親知らずがどちらを向いているか
- どのくらい深く埋まっているか
- 歯根が何本あるか
- 歯根がどのような形をしているか
- 手前の歯とどのような位置関係にあるか
- 周囲に病変がないか
- 神経など重要な組織との位置関係
などを確認します。
レントゲンで十分判断できるケースもあれば、より詳しい情報が必要な場合にCT撮影を行うことがあります。「横向きだから難しい」と一括りにするのではなく、画像を確認して抜歯の難易度を評価します。
同じ「横向きの親知らず」でも、抜歯の難易度は同じではありません。歯の位置や歯根の形、周囲の組織との関係などによって処置内容が変わります。
| 確認する項目 | 確認する理由 |
|---|---|
| 親知らずの向き | 抜歯する方向や方法を検討するため |
| 埋まっている深さ | 切開や骨を削る処置が必要か判断するため |
| 歯根の形 | 抜歯の難易度を判断するため |
| 手前の歯との位置関係 | 第二大臼歯への影響を確認するため |
| 神経などとの位置関係 | 抜歯に伴うリスクを評価するため |
画像検査は、単に「親知らずがあるか」を見るためだけではありません。抜くメリットと抜歯のリスクを比較するための材料を集めることが大きな目的です。
親知らずを抜くリスクやデメリットは?
親知らずの抜歯は外科処置なので、痛み、腫れ、出血、感染などが起こる可能性があります。特に深く埋まった下顎の親知らずでは、神経との位置関係などによって注意が必要な場合があります。抜歯によるメリットだけでなく、処置そのもののリスクも考慮して判断します。
「抜けば安心」ではなく、抜歯そのものにも負担やリスクがあります。
親知らずを抜いた後には、ある程度の痛みや腫れが出ることがあります。特に埋伏している親知らずでは、通常の抜歯より処置範囲が広くなる場合があります。
考えられる主なリスクには、
- 痛み・腫れ
→ 抜歯後には炎症反応として痛みや腫れが出ることがあります。 - 出血
→ 抜歯直後には出血します。通常は圧迫によって止血しますが、服用している薬や全身状態によって注意が必要です。 - 感染
→ 抜歯した部分に細菌感染が起こることがあります。 - 治癒の遅れ
→ 抜歯後の血のかたまりが失われるなどして、強い痛みが続く場合があります。 - 神経への影響
→ 下顎の親知らずと神経が近いケースでは、抜歯後にしびれなどの症状が生じる可能性があります。
などがあります。
また、持病がある方や薬を服用している方では、抜歯前に確認が必要です。
日本口腔外科学会では、高血圧症や糖尿病、血液疾患などの持病がある方や、血液を固まりにくくする薬を服用している方では、抜歯に際して注意が必要であると説明しています。
自己判断で薬を中止せず、服用している薬は歯科医師へ伝えましょう。
親知らずの抜歯にはどのくらいの費用・期間・通院回数がかかる?
親知らずの抜歯に必要な費用や処置時間、通院回数は、生え方や抜歯の難易度によって異なります。まっすぐ生えた親知らずと、骨の中に深く埋まった親知らずでは必要な処置が異なるため、一律には決まりません。また、抜歯後に状態確認や抜糸のための受診が必要になる場合があります。
費用・処置時間・通院回数は「親知らずがどのように生えているか」で変わります。
親知らずの抜歯は、一般的に保険診療の対象となるケースが多いですが、実際の費用は検査や処置内容によって変わります。
例えば、
- レントゲン撮影の有無
- CT撮影が必要か
- 通常の抜歯か
- 埋伏した親知らずの抜歯か
- 薬の処方があるか
などによって負担額は異なります。
また、抜歯そのものは1回の受診で行っても、その後に傷口の確認や抜糸などで来院していただくことがあります。
「親知らずの抜歯はいくら」「何分で終わる」と数字だけで考えるより、まず自分の親知らずがどの程度の難易度なのかを確認することが大切です。
親知らずを抜くかどうかはどうやって決める?
親知らずの抜歯は、「斜めだから」「痛くないから」といった一つの条件だけでは決めません。現在の症状、清掃状態、手前の歯への影響、画像上の病変、抜歯の難易度や全身状態などを総合して判断します。問題のない親知らずを残す場合は、経過観察を続けることも大切です。
判断の基本は「残すリスク」と「抜くリスク」の比較です。
親知らずを抜くか迷ったら、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 今、問題が起こっているか
→ 痛み、腫れ、虫歯、智歯周囲炎などがないかを確認します。 - 手前の歯を傷めていないか
→ 親知らずだけでなく、第二大臼歯の虫歯や歯周組織への影響を確認します。 - 今後も清潔に保てるか
→ 歯ブラシが届かず、歯垢がいつも残ってしまうような位置なのかを確認します。 - 画像上の問題がないか
→ 嚢胞などの病変や周囲への影響を確認します。 - 抜歯そのもののリスクはどの程度か
→ 埋まっている深さ、歯根の形、神経との位置関係、全身状態などを確認します。
この5つを比べて、抜歯するメリットが上回ると判断した場合には抜歯を検討します。
親知らずを抜くかどうかは、一つの条件では決まりません。
「残すリスク」と「抜くリスク」を並べて考えると、治療方針を理解しやすくなります。
| 判断ポイント | 確認する内容 |
|---|---|
| 現在の症状 | 痛み・腫れ・炎症を繰り返していないか |
| 親知らずの状態 | 虫歯や歯周組織の問題がないか |
| 手前の歯への影響 | 第二大臼歯を傷めていないか |
| 清掃性 | 今後も歯磨きで清潔に保てるか |
| 画像上の状態 | 嚢胞などの病変がないか |
| 抜歯のリスク | 歯根や神経との位置関係、全身状態など |
「抜かない」という判断になった場合も、それで終了とは限りません。
親知らずやその手前の歯を定期的に確認し、状態が変わったときに改めて治療方針を考えることがあります。
親知らずの抜歯の必要性に関するQ&A
Q1. 親知らずは4本とも抜いた方がいいですか?
4本すべてを一律に抜歯する必要はありません。それぞれの親知らずについて、生え方、症状、虫歯や炎症の有無、周囲の歯への影響を確認して判断します。
親知らずは一本ずつ状態を見て判断します。
例えば右下だけ問題があり、ほかの3本は健康に機能しているということもあります。「親知らずがある=4本とも抜く」と考える必要はありません。
Q2. 痛くない親知らずも抜くことがありますか?
あります。自覚症状がなくても、手前の歯に虫歯ができている、画像上で周囲に病変があるなど、抜歯を検討する理由が見つかる場合があります。
痛みの有無だけでは判断できません。
反対に、無症状で周囲への悪影響もなければ、抜歯せず経過を見る場合もあります。
Q3. 横向きの親知らずは必ず抜歯しますか?
横向きという理由だけで機械的に抜歯するわけではありません。ただし、一部がお口の中に出ていて清掃できない場合や、手前の歯へ悪影響が出ている場合などは、抜歯を検討します。
向きだけでなく、周囲への影響を確認します。
特に第二大臼歯への影響は、親知らずを残すかどうかを考える重要なポイントです。
Q4. 完全に埋まった親知らずはそのままでも大丈夫ですか?
完全に埋まっていて症状や病変がなく、周囲への悪影響も認められない場合は、抜歯せず経過観察になることがあります。ただし、まれに嚢胞などが生じることがあるため、必要に応じて画像で確認します。
抜かない場合も「何もしない」ではなく、状態を確認していくことが大切です。
定期的に歯科医院を受診していれば、変化があった場合にも対応しやすくなります。
Q5. 親知らずは若いうちに抜いた方がいいですか?
年齢だけで抜歯の必要性を決めるわけではありません。若い方でも問題のない親知らずは経過を見る場合がありますし、反対に症状や周囲への悪影響があれば抜歯を検討します。年齢だけでなく、親知らずの状態と抜歯の難易度を含めて判断することが重要です。
「何歳までに抜く」と一律に考える必要はありません。
将来のリスクを気にしている場合は、まずレントゲンなどで現在の位置を確認し、抜歯が必要なのか、経過観察でよいのかを歯科医師と相談しましょう。
まとめ|親知らずは「抜くか抜かないか」だけでなく、周囲の歯まで見て判断しよう
親知らずは、すべて抜かなければならない歯ではありません。正常に生えて機能しており、十分に歯磨きができ、周囲に悪影響がなければ残せる場合があります。一方、痛みや腫れを繰り返す、虫歯になっている、手前の歯に悪影響を与えている、嚢胞などの病変がある場合には抜歯を検討します。
親知らずの判断で大切なのは、「その歯を残すことでお口全体を健康に保てるか」です。
親知らずを抜くか迷ったときは、
- 痛みや腫れを繰り返していないか
- 親知らずが虫歯になっていないか
- 手前の第二大臼歯に悪影響がないか
- 歯磨きで清潔に保てるか
- レントゲンなどで病変が確認されていないか
- 抜歯そのもののリスクはどの程度か
を総合的に確認します。
特に覚えておきたいのは、「親知らずを守ること」だけが目的ではないという点です。
親知らずのすぐ手前にある第二大臼歯は、これから長く噛むために残したい大切な永久歯です。
親知らずを無理に残した結果、手前の健康な歯を大きな虫歯にしてしまうようであれば、本末転倒になってしまいます。
一方、問題のない親知らずを必要以上に急いで抜く必要もありません。「抜く」「抜かない」の二択だけで考えず、親知らずと周囲の歯を含めて、将来どちらがお口の健康を守りやすいかという視点で判断することが大切です。
親知らずの状態はご自身では確認しにくいため、「生えてきたかもしれない」「横向きと言われた」「抜いた方がよいのか迷っている」という場合は、一度歯科医院で現在の状態を確認してみましょう。

