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子供が歯ぎしりを寝てる時にしてるけど大丈夫なの?

子供が歯ぎしりを寝てる時にしているのが気になるというパパやママはおられます。小さいうちから歯ぎしりをして歯がボロボロにならないのかと不安になるでしょう。結論から申し上げますと、子供の歯ぎしりは、多くの場合、成長過程の自然な現象です。

子どもが歯ぎしりをするって本当?

お子さまが夜、寝ている時に、ギリギリ、キリキリと歯をすり合わせるような音を立てていると、このまま放っておいても大丈夫?と心配になる保護者も多いでしょう。実際、子どもでも歯ぎしり、専門的にはブラキシズム(bruxism)が見られることがあります。ただし、大人の歯ぎしりとは少し意味合いやリスクが異なります。

成長過程にある子どもであれば、歯やあご、噛み合わせが変化していく中で、一過性に歯ぎしりの音や動きが出ることが比較的多く、必ずしもお口の癖や異常とは言えないケースも多いのです。そのため、音が気になる、歯が削れているかもと思うような歯ぎしりでも、まずは原因と見守るポイントを知っておくことが大切です。

子どもが歯ぎしりする主な原因とは

なぜ子どもが歯ぎしりをするのか、代表的な3つの原因が挙げられています。

顎の位置を決めるため

乳歯が生え始める生後6~8か月ごろには、顎の成長、歯の生え方が定まっていないため、歯ぎしりを通じて顎の位置を試しているという説があります。

咬み合わせを整えるため

まだ上下の歯がどう噛み合うかが安定していない時期に、歯ぎしりがその安定を促す役割を果たすという考え方もあります。

永久歯が生えるスペースを作るため

4~6歳くらいで乳歯から永久歯に生え替わる時期、顎の成長と共に永久歯がしっかり並ぶスペースを確保するために歯ぎしりをすることがあるとされます。つまり、子どもの歯ぎしりは成長過程の現象として捉えられることが多く、過度に心配する必要はないケースが多いです。

ただし、これらが原因だからといって、すべての歯ぎしりが放置して問題なしというわけではありません。もちろん、注意すべきサインもあります。

歯ぎしりが見られやすい年齢や時期

子どもが歯ぎしりを始めるタイミング、またいつまで様子見でいいかの目安についてご説明します。歯が生え始める生後6~8か月ごろから、乳歯列が進んでくると歯ぎしりが見られ、昼間のみでなく寝ているときにも歯ぎしりが起こることがあります。年齢としては、10歳までの子どもの約4割が歯ぎしりを経験しているとのデータも紹介されています。

つまり、子どもの歯ぎしりは決して珍しいことではなく、多くの場合成長と共に収まっていく傾向があります。親としては、起きている現象を知り、いつまで様子を見て良いか、何をチェックすべきかを把握しておくと安心につながります。

歯並びや咬み合わせと歯ぎしりの関係

  • 歯並びが悪いから歯ぎしりが起こる
  • 歯ぎしりが歯並びを悪くする

歯並びと歯ぎしりの関係性も気になるところとは思います。お子さまの歯並びに不正咬合がある場合、歯ぎしりの際に上下の歯がぶつかることで衝撃が起き、歯や顎関節に負担がかかる可能性があります。不正咬合が原因の歯ぎしりを放置していると、歯が欠けたり、すり減り、歯の揺れなどのリスクが生じるケースがあります。

不正咬合の種類

不正咬合と言われる歯並びの問題を挙げていきます。

不正咬合の種類 特徴・影響
上顎前突(じょうがくぜんとつ) 上の前歯や上顎が前に出ている。唇が閉じにくく乾燥しやすい。
下顎前突(かがくぜんとつ) 下の前歯が上より前に出る。しゃくれて見え、食べづらい。
交叉咬合(こうさこうごう) 顎が左右にずれ、部分的に上下逆の噛み合わせ。噛みにくく頭痛・肩こりの原因にも。
過蓋咬合(かがいこうごう) 上の歯が下の歯を覆う。歯ぐきを傷つけ、歯がすり減ることも。
開咬(かいこう) 奥歯は噛めるが前歯が噛み合わない。発音や咀嚼に影響。
叢生(そうせい) 歯が重なってガタガタ。歯磨きが難しく虫歯や歯周病のリスク増。
空隙歯列(くうげきしれつ) 歯と歯の間にすき間。見た目や発音に影響することも。

咬み合わせや歯列が整ってくると、歯ぎしりの原因の一つである咬合のズレが改善され、歯ぎしりそのものが減ることもあります。

]歯並びや咬み合わせと子どもの歯ぎしりは密接な関係があります。歯ぎしりしていると思ったら、歯ぎしりそのものだけでなく、歯並びや噛み合わせの観点からもチェックすることが大切です。

自宅でできる歯ぎしり対策

歯科に行くべきかどうかを判断する前段階として、ご家庭でできる歯ぎしり対策をいくつかご紹介します。

姿勢を正す
机に向かって勉強しているとき、テレビやスマホを見ているときに背中が丸くなったり、頬杖をついたりしていると、首や顎の筋肉が緊張し、顎の位置がずれやすくなります。これが歯ぎしりの引き金となる可能性がありますので、姿勢改善を心がけましょう。

仰向けに寝る習慣をつける
横向きやうつ伏せで寝ていると、頭部及び顎部に偏った負荷がかかることがあります。仰向けで寝て、顎や顔の筋肉がリラックスできる環境を整えることが歯ぎしり軽減につながりますので、なるべくそう寝るようにしましょう。

リラックスできる環境づくり
子どもも学校や習い事、家庭環境などでストレスを抱えることがあります。ストレスにより歯ぎしりを誘発する可能性もあるため、寝る前のスマホやテレビを控えめにして、リラックスして親子で会話する時間を持つなど、心身を落ち着かせる工夫をしましょう。

その他の習慣の見直し
顎の筋肉や咬合力を鍛えるため、よく噛む食事を心がけましょう。口呼吸になっていないかどうか、鼻呼吸ができているかも確認し、舌の位置や口周りの筋肉の使い方を意識すると良いでしょう。

いずれも歯ぎしりそのものを必ず止めるための確実な方法ではありませんが、歯ぎしりを誘発したり、悪化させる要因を減らす視点から捉えればとても有効です。

受診すべきサインと歯科医院での対処

子どもの歯ぎしりで様子見していいかどうか、どんな場合に歯科受診を考えたほうがいいかという症状やサインをご紹介します。

受診を検討すべきサイン

このような症状が見られたら、一度歯科医院へ相談したほうが安心です。

  • 口を開けると顎に痛みが出てガクガク音がする(顎関節症の可能性)
  • 歯が欠けたり、歯が大きくすり減って平らになったり、歯が揺れている
  • 家族が気付くほど歯ぎしりの音が非常に大きく、朝起きたときに顎や頬にこわばりを訴える
  • 6歳を過ぎても改善の兆しがない
  • 歯並びや噛み合わせについて気になる点がある

歯科での対処例

歯医者さんでは、このようなアプローチがあります。

  • 歯ぎしりによる負荷から歯や顎関節の負担を軽くするためマウスピース(ナイトガード)を作製
  • 咬み合わせや歯並びのチェックを行い、必要があれば矯正治療をおすすめ
  • 舌、唇、頬など口腔周囲筋のバランスを整える口腔筋機能訓練(MFT)の紹介

あいうべ体操

ステップ 動き方 ポイント
「あー」と口を大きく開ける 顎をしっかり下げて、喉の奥まで開けるイメージ
「いー」と口を横に広げる 口角をしっかり上げて、頬の筋肉を使う
「うー」と口をすぼめる 唇を前に突き出し、口輪筋を意識
「べー」と舌を下に出す 舌をできるだけ下に伸ばし、喉の奥を意識する

これで1セットですが、1日30回程度を目安に続けましょう。口周りや舌、表情筋が鍛えられ、口呼吸の改善やいびき予防にも効果があります。

舌を動かす体操

口を閉じたまま、舌で歯ぐきの表面をゆっくりなぞります。上→右→下→左の順に1周し、次に、反対方向の左→下→右→上にもゆっくり1周していきます。1日20回ずつが目安です。あいうべ体操と同様に、お口周りや表情筋のトレーニング、舌の筋力アップにより口呼吸や嚥下機能の改善などに役立ちます。

見守ればいい段階か、早めの介入が望ましいかは、歯科への受診により判断してもらえるため、迷ったときには相談することが一番です。

まとめ


子どもの歯ぎしりは成長過程の自然な現象で、過度の心配は不要です。顎の位置決め、咬み合わせの安定化、永久歯スペース確保などが原因と考えられ、成長に伴い改善する傾向があります。ただし、歯並びや咬み合わせのずれがある場合、歯、あご、筋肉に明らかな負担が出ている場合は、歯科受診を検討すべきです。

ご家庭では、姿勢や睡眠体勢、リラックス環境、噛む習慣や口腔筋の使い方などを整えることで、歯ぎしりの誘因を減らすことが可能です。様子を見ることと放置することは違いますので、定期的にお子さまのお口の状態、歯並び、顎の動き、歯の摩耗などを観察し、気になる点があれば早めに専門家に相談しましょう。

歯ぎしりはただの音のみではなく、子どもの成長やお口の使い方、顎の発育と密接に結びついているということです。お子さまの歯とあごの健やかな成長にとって、小さなサインを見逃さないことが大切です。