歯と口の基礎知識

歯の硬さはどれくらいなの?

歯の硬さはどれくらい?

歯の硬さがどれくらいか比較すると、鉄よりも硬いという値が出ています。歯のどの部分が硬いのか、歯の硬さとお口の健康の関係性、歯の硬さを保つための方法について詳しくご紹介いたします。

歯の硬さを分かりやすく教えて

お口の中に生えている天然歯(永久歯)は硬いと言いますが、実際にどの部分が硬いのでしょうか。歯の構造を大まかにご説明すると、血管や歯髄(神経)を覆っている象牙質があり、その象牙質をさらに覆っている組織がエナメル質です。この中で硬いとされる組織は、口腔内に露出している白いエナメル質です。エナメル質の硬さは、宝石の水晶と同じレベルの硬さです。

歯と鉄はどちらが硬い?

水晶やダイヤモンドは結晶の固体ですので、鉱物(ミネラル)と一般的に呼びます。鉱物の硬さを計測する尺度として、モース硬度があります。モース硬度で測る硬さとは、いきなり叩いて壊れるかどうかではなく、ひっかいた時に傷がつきやすいかどうかという尺度で計測されています。

モース硬度の一覧

モース硬度1 チョーク
モース硬度2 石膏
モース硬度3 珊瑚
モース硬度4 鉄
モース硬度5 ガラス・アパタイト
モース硬度6 オパール
モース硬度7 歯・水晶
モース硬度8 トパーズ
モース硬度9 サファイア
モース硬度10 ダイヤモンド

モース硬度の値が小さい方が傷がつきやすいです。ガラスのモース硬度が5と言われるため、人間の歯は鉄やガラスよりも硬いと言えます。

そんなに硬いのになぜ虫歯になる?

歯のエナメル質は鉄よりも硬いのに、どうして虫歯などの細菌感染を起こしたり、歯が抜けてしまうのか疑問に思われるでしょう。どれだけ硬い歯でも弱くしてしまう原因が酸です。

酸とは

酸っぱい飲み物や食べ物を食べた時は、噛むことにより、お口の中が酸性に傾きます。ただ、酸は、酸っぱい食べ物や飲み物を口に入れたときだけ起きるわけではありません。

  1. 虫歯の原因菌であるミュータンス菌がお口に常在する
  2. 菌が歯に付着して粘り気のある歯垢となる
  3. お口の中に入った糖分を取り込み、歯垢の中で菌が増殖し、酸を排出する
  4. 酸により、歯の成分のカルシウムやリンが溶け出す
  5. エナメル質の内部の象牙質まで穴が開くと菌が侵入する
  6. 感染部分を削り取り、詰め物や被せ物の処置が必要となる

硬さを保つためにはどうすればよい?

歯の硬さを保つためには、食べたら歯磨きを行うことが一番です。食べ物を咀嚼すると、口腔内の食べかすが付着し、食べ物の硬さによってはエナメル質に小さな傷がつき、そこに歯垢が付着してしまうことがあります。虫歯菌を保有している方の場合、食べ物の糖分を酸へと変化させるため、どうしてもお口の中が酸性に傾いてしまいます。そのような状態から改善するには、口腔内を中性にするため、歯磨きを行うことが大切です。

初期むし歯は治る?

酸で初期むし歯(エナメル質が白濁した段階)になっても、丁寧な歯磨きを行えば、唾液による自浄作用で再石灰化し、歯は硬くなります。硬い天然歯を出来るだけ長く保ち、義歯治療が必要ないお口にしておく為には、下記のことを守りましょう。

  • セルフケアの食後の歯磨きをきちんと行う
  • 定期的に歯科医院へ通院しメンテナンスを受ける

歯の硬さはどのくらいに関するQ&A

人間の歯で最も硬い部分はどこですか?

人間の歯で最も硬い部分はエナメル質です。エナメル質は歯の外側を覆っており、その硬さは宝石の水晶と同じレベルです。このエナメル質は、歯の保護層として機能し、外部からの物理的な力や化学的な攻撃から歯を守ります。

歯は鉄よりも硬いのに、なぜ虫歯になるのでしょうか?

歯が鉄よりも硬いにも関わらず虫歯になるのは、酸による影響が大きいためです。食事や虫歯菌の活動によって生じる酸は、エナメル質のミネラルを溶解させ、歯を弱くしてしまいます。この酸性の環境が続くと、エナメル質が徐々に侵され、虫歯が発生します。

歯の硬さを保つためには、どのようなケアが必要ですか?

歯の硬さを保つためには、食後の歯磨きが非常に重要です。食べ物の残留物や糖分を取り除くことで、虫歯菌が酸を生成するのを防ぎます。また、フッ素を含む歯磨き粉の使用や定期的な歯科メンテナンスも、エナメル質を強化し歯の硬さを保つのに役立ちます。

まとめ


歯のエナメル質は鉄よりも硬いという数値がありますが、虫歯菌の排出する酸にはとても弱いです。硬い歯が酸により虫歯となるのを予防するためには、食べたら歯を磨くこと、寝る前には歯間ブラシやデンタルフロスを使用した丁寧なブラッシングを行うことです。また、歯や歯肉に問題がないか定期通院をし、メンテナンスを受けることが大切です。

歯の硬さについての研究は、歯の種類やその部位、さらには歯の健康状態によって異なる結果を示しています。以下の2つの研究は、歯の硬さに関連する貴重な情報を提供しています。

1. ある研究では、フッ化物が存在するかどうかにかかわらず、人間の歯科エナメルのサンプルの硬さと力の関係を比較しました。この研究では、フッ化物の影響を受けた歯とそうでない歯の間で硬さと力の関係が統計的に有意な違いがあることが示されました。フッ化物の影響を受けた歯では、この関係がより強く、完全な歯の構造が弱まることを示唆しています。【出典元

2. 別の研究では、永久歯のセメント質の硬さと化学組成が根尖部の根吸収の程度に影響を与えるかどうかについて検討されました。この研究では、歯のセメント質の硬さが歯の根吸収に関与する可能性が示唆されています。この研究は、歯科矯正治療における根吸収のリスクを理解する上で重要な洞察を提供しています。【出典元

これらの研究結果から、歯の硬さは歯の健康や治療に重要な要素であり、歯のエナメルやセメント質の硬さはフッ化物の影響や個々の化学組成によって異なることが理解できます。歯のケアにおいて、これらの要因を考慮することが重要です。